都議会意見1 1998年第1回定例会(3月3日)
1998年3月3日 平成10年第1回定例会(第2号)
内藤尚(自由民主党)
「最後に、平和祈念館について申し上げます。
平和であることは、人々が幸せな生活を営む上でも最も重要な前提であります。このために、一夜にして十万人が犠牲となった東京大空襲などの犠牲者を悼むとともに、戦争の惨禍を語り継ぎ、都民一人一人が平和の大切さを確認する拠点として平和祈念館を建設することは大いに賛成であります。
しかし、現在、検討が進められているこの祈念館の展示内容は、国際法でも認められない無差別爆撃であった東京空襲が、あたかも東京が軍事都市であったからとか、日本がアジアに一方的に侵略したからとかの印象を与えかねないとの批判があることや、戦後復興に立ち上がった都民の力強い歩みについての展示がない等々の指摘など、まだまだ議論すべき課題がたくさんあります。
二十一世紀を担う戦争を知らない若い世代が、東京の、そして我が国のたどってきた歴史を国際的な立場から正しく認識するとともに、廃虚の中から今日の繁栄を築いた我が国を誇りに思い、たくましく育っていくことが何よりも求められております。
そうした観点からすると、平和祈念館の展示は、公正中立で、正しい史実をもとに、大方の都民の賛同を得られる内容とすることが基本となるべきものと考えますが、青島知事、いかがでしようか。
また、平和への気持ちを確たるものとするためには、何よりも戦争犠牲者を追悼する心がなければなりません。このため、東京空襲で犠牲となった人々の名簿を収集し、これを祈念館に保存し、犠牲者を悼む精神を保持していくことも多くの人々の願いであると考えますが、いかがでしょうか、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。」
出典 東京都議会 会議録
平成10年_第1回定例会(第2号) 本文 1998-03-03(5)
木村陽治(日本共産党)
「最後に、平和の問題についてです。
まず、都平和祈念館についてです。都が建設に踏み出す出発点となった九三年の基本構想懇談会の報告が、改めて今、重要になっています。というのは、この報告が、平和の問題についてさまざまな意見がある中で、各党の代表も加わって、広範な都民が一致し得る内容を粘り強くまとめ上げたものだからであります。
報告は、東京都にふさわしい平和祈念館のあり方を明らかにしたものですが、平和祈念館設置の意義を述べるに当たって、我が国は、さきの大戦でアジア、太平洋の人々などに多大な被害をもたらすとともに、みずからも多くの犠牲を払い、身をもって戦争の悲惨さと平和のとうとさを経験しましたと明確に述べています。これは、都民が共有している戦争体験と一致するものであるとともに、再び戦争を繰り返さないということを誓って、戦後、平和で民主的な国づくりを進めてきた広範な国民、都民の深い思いでもあるのです。
報告が述べている基本的な立場はぜひ必要なものです。あの東京大空襲が国際法にも違反する非戦闘員に対する無差別殺りくであったことは、この立場を国内外に明らかにし、祈念館がそれに沿った内容のものになってこそ十分な説得力を持つものではないでしょうか。東京大空襲は、都民が体験した悲惨な戦争体験であり、平和を求める都民の原点です。
基本構想懇談会の報告が、平和祈念館の基本的性格の第一に、東京大空襲の犠牲者を悼み、都民の戦争体験を継承するを挙げています。東京大空襲の犠牲者は十万人を超え、その規模は、広島、長崎の原爆投下に匹敵します。犠牲者の遺骨は、現在、墨田区にある都立横網町公園の東京都慰霊堂に合祀されていますが、戦後五十年以上過ぎた今も犠牲者名簿が整備されておらず、無差別殺りくの犠牲となった方はだれなのか、今も名前が特定されていません。これでは、本当の意味で犠牲者を悼み、平和を誓うこともできないのではないでしょうか。戦後五十余年が過ぎた今、何としても犠牲者名簿を作成したいという機運が、改めて関係者の間で広がっています。
知事、広範な都民の賛同と協力を得れば、犠牲者名簿の整備は可能です。関係者の積年の願いにこたえ、東京大空襲の犠牲者名簿の整備を、都の責任で直ちに取り組まれてはいかがですか。知事の所見を伺います。」
出典 東京都議会 会議録
平成10年_第1回定例会(第2号) 本文 1998-03-03(17)
石井義修(公明党)
「次に、平和祈念館について伺います。
戦争ほど悲惨なものはなく、そしていつの時代でも戦争の犠牲者は庶民、大衆であります。憎むべきは、戦争そのものであります。平和祈念館は、戦争の悲惨さを振り返るとともに、その犠牲者を悼み、我が国の過去の歴史をきちんと踏まえた上で、将来へ向けて平和への決意を新たにする場所であるべきであります。したがって、その展示は、空襲による犠牲者を身近に持つ人も、戦争を知らない人も、そして東京を訪れる外国の人たちを含め、訪れるすべての人たちから信頼され、理解され、賛同を受けるものとすべきであります。所見を伺います。」
出典 東京都議会 会議録
平成10年_第1回定例会(第2号) 本文 1998-03-03(27)
[説明]
1996年5月、東京都平和祈念館の「基本的な事項について意見を求め、もって平和祈念館の円滑な建設の推進を図る」ため、東京都平和祈念館(仮称)建設委員会が設置され(座長 下山瑛二)、平和祈念館の基本計画、建築、展示などの具体的な議論がはじまった。
1997年12月18日、都議会文教委員会で平和祈念館に関する集中審議が行なわれた。この前後から平和祈念館の展示案やその背景にある歴史認識をめぐって議員から多くの意見が出され、1998年3月27日の第1回定例会(第6号)では、予算案の可決にあたり、「平和祈念館の建設に当たっては、展示内容等について、都議会の合意を得た上で実施すること」と付帯決議が付けられた。
この定例会での発言を見ると、各党議員の論点を大まかに知ることができる。
文教委員会での集中審議は、1998年4月23日、同7月30日にも開催された。
都議会文教委員会 東京都平和祈念館に関する集中審議 1997年12月18日
閲覧 平成9年文教委員会 本文 1997-12-18
同 1998年4月23日
閲覧 平成10年文教委員会 本文 1998-04-23
同 1998年7月30日
閲覧 平成10年文教委員会 本文 1998-07-30
1998年3月 都議会第1回定例会で決定された付帯決議
閲覧 平成10年_第1回定例会(第6号) 本文 1998-03-27
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