都議会意見3 1998年第1回定例会(3月5日)
1998年3月5日第1回定例会(第4号)
土屋たかゆき(民主党)
「次に、東京都平和祈念館についてお伺いいたしますが、この際、昭和二十年三月十日の東京大空襲で亡くなられた十万余の市民のみたまに、心から追悼の意を表したいと思います。
私は、平和祈念館の建設について、公平、公正な展示のもとに、参観者が平和について冷静に考えることのできる施設の実現に全力を尽くす決意であり、同時に、過ちを二度と繰り返さないための平和アピールを発信するという民主党の基本政策及び基本理念に基づいて平和祈念館建設問題を検証していく必要があると考えております。
今、議会では、軍事都市東京という言葉の是非が議論になっています。当時の東京をこうした言葉で表現する新しい手法は、軍事基地があったから、軍需工場があったから、空襲は仕方なかったという空襲容認論に道を開くものであり、不適切といわざるを得ません。東京の下町の広い地域に焼夷弾をまき、あらかじめ退路をふさいでから多数の市民を焼き殺した東京大空襲は、全住民を恐怖に陥れることによって意思を強制する方法を用いるアメリカの戦略爆撃の思想に基づくものであり、東京を焼き畑にするといった東京大空襲の指揮官であるカーチス・ルメイの発想でもあり、広島及び長崎への原爆投下と同様に、国際法に違反した無差別殺りく行為であることは明らかな事実です。
さらに重要なことは、展示全体の構成が、明らかに、東京大空襲は日本の侵略の結果であるという意図のもとにつくられているということです。この平和祈念館は、戦争の無残さ、恐ろしさを後世に伝えると同時に、東京大空襲で亡くなった十万人の方々の追悼をすることも大きな使命の一つでなくてはなりません。しかし、いつの間にか、日本の加害責任を追及する展示が多くを占め、昨年、都の示した展示計画案では、慰霊は全体の七分の一でしかありません。
そして、日本の受けた侵略、殺りくは一切無視されています。満州や北方領土での同胞の殺りくに触れないで、参観者が真の平和を考えることは果たしてできるでしょうか。
つまり、日本加害説のみを取り上げ、その他の歴史的事実を無視することで、東京大空襲は、日本がアジアを侵略した当然の結果だといった空襲容認論に立った展示内容では、公平な歴史観を養い、そのもとで日本と世界の平和を考える心を育成することにはならないと思います。欧米列強のアジア植民地政策、日本の責任、日本への侵略を客観的に展示することが必要と考えますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
既に、こうした平和祈念館と同じものが、長崎や大阪でもできています。しかし、長崎の原爆資料館は、平成八年四月一日の開館後、展示に多くの誤りや不適切な表現、やらせ写真まで使用していたことが判明し、約百五十カ所の訂正が行われたのです。
そして、当時、展示内容を開館三カ月前まで明らかにしなかったことに非難が集中しましたが、当事者である長崎の本島元市長は、週刊誌のインタビューに答えて、なぜその展示内容をオープンにしなかったかというと、公表すれば、できるものもできないからです、議会に詳細に話したりすればまとまるはずがない、少数者は無視するしかないと発言をしています。つまり、自分の正しいと信ずる目的のためには、情報を閉鎖し、少数者は無視しても当然であるといっています。市と都の違いはありますが、自治体の長として、知事のこの問題に対するご感想をお伺いしたいと思います。
さて、昨年の都議会議員選挙では、私は情報公開を公約として掲げていましたが、青島知事も開かれた都政を目指しています。しかし、平成四年から検討が始まった平和祈念館は、基本構想懇談会で骨子が決定され、平成六年三月、基本計画に関する調査委員会において、展示の細目や開館後の運営形態までもが決定されたにもかかわらず、議会に正式に報告されず、昨年十二月の常任委員会での集中審議に入ってから、ようやくその展示内容などが報告されたのです。長崎と同様、東京もこの間、積極的に広報を行ってきたとはいえません。昨年十月以降、東京都平和祈念館の問題がかなりマスコミに出ている現状でさえ、多くの都民はこの問題を知りません。
平和祈念館の建設については、一人でも多くの都民の意見を聞き、英知を集めて、本当に戦争の惨劇を繰り返さない内容のものとすべきです。そのためには、今のうちから展示内容を都民に示して、意見を集約すべきではないでしょうか。
同時に、建設予定地である墨田区横網町公園周辺の住民への広報を十分に行うべきです。
都は、昨年十二月四日、五日の両日、江戸東京博物館会議室において町内会への説明会を実施していますが、出席した者はわずか二十六名にすぎず、しかも、出席した住民の方からは、軍事都市東京という表現は問題ではないか、震災と戦災を同じ場所で慰霊するのはおかしい、地下の施設は建設費がかかるのではないかといった素朴な疑問が上がっています。展示内容の広報を含め、建設予定地ばかりでなく、各地において、都民のさまざまな意見を聞く会を開催すべきと思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。
さらに、新設される平和祈念館は、東京大空襲罹災後の都民の復興の軌跡を伝える施設とすべきです。東京都民は、この困難な状況の中で、首都東京の一日も早い復興を願い、再建に力を尽くしてきました。今日の東京都の繁栄の根源をたどれば、それは、戦災復興に始まる都民の努力にあることを忘れてはなりません。
私は、都が建設する平和祈念館には、焦土の中から復興のために立ち上がった都民の姿を掘り起こし、これを後世に伝える展示資料が必要だと考えます。
また、新設される平和祈念館の運営は、広く市民に公開された公平、公正のものとすべきです。施設の運営が一部の人々の意見で決定されてはなりません。施設の運営については、各界の代表による運営委員会を設置すると同時に、議会にチェック機能を持たせることも必要です。施設の展示についても、開館前はもちろん、開館後も展示検討委員会によって内容を検証し、公平、公正な展示を心がけなければなりません。私は、都が建設する平和祈念館の運営は、広く市民に公開された公平、公正なものとすべきだと考えます。
最後に、この平和祈念館は、十分な情報公開と議論のもとに、建設に向けてさらなる努力を重ねていくべきだと考えております。
都は、平成五年六月の東京都平和記念館基本構想懇談会報告の中で明らかにされている、第一に、戦争の惨禍を語り継ぎ、都民一人一人が平和の大切さを確認する拠点として設置されることが期待されます、第二に、都民の平和への願いを世界に向けて発信する拠点、つまり東京の平和のシンボルとして設置されることが期待されますという平和祈念館建設の原点に立ち返って、開かれた議論の中で、都民の意見を反映した展示内容とすべきであると思いますが、ご所見をお伺いしたいと思います。」
出典 東京都議会 会議録
平成10年_第1回定例会(第4号) 本文 1998-03-05(31)
[説明]
都議会意見1の説明を参照
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